「債務整理」更正賦課決定取消請求事件

いずれ
取締役
報酬

主文

1 被告が,原告に対し,平成14年12月13日付けでした原告の平成12年分所得税の更正処分(ただし,平成15年3月25日付け異議決定によって取り消された後のもの)のうち申告額を超える部分及びこれについての過少申告加算税賦課決定処分をいずれも取り消す。
2 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用はこれを4分し,その3を被告の,その余を原告の各負担とする。

事実及び理由

第1 原告の請求

1 主文1項と同旨 
2 被告が,原告に対し,平成14年12月13日付けでした原告の平成11年1月1日から同年12月31日まで,平成12年1月1日から同年12月31日まで及び平成13年1月1日から同年12月31日までの各課税期間分の消費税及び地方消費税の各更正処分のうち申告額を超える部分並びに消費税及び地方消費税の過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。

第2 事案の概要

本件は,被告が,@原告所有地についての土地賃貸借契約が合意解約される際に,賃借人から原告に無償で提供された同土地上の建物等の利益(以下「本件建物利益」という。)が不動産所得に当たるとして,原告の平成12年分所得税について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分(以下,両者を併せて「本件所得税課税処分」という。)を行い,A原告所有の集合賃貸住宅の敷地内に設けられた駐車場の収入(以下「本件駐車場収入」という。)及び後記の教会からの賃料収入(以下「本件教会賃料」という。)はいずれも消費税及び地方消費税(以下,両者を併せて「消費税等」という。)の課税対象売上げ(以下「課税売上げ」という。)に当たるとして,原告の前掲各課税期間の消費税等について更正処分並びに過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件消費税等課税処分」といい,「本件所得税課税処分」を併せて「本件各課税処分」という。)を行ったのに対し,原告が,@本件建物利益は一時所得に当たり,A本件駐車場収入は住宅の貸付けによる収入に当たり,本件教会賃料はその敷地の貸付けに対する地代であって,いずれも課税売上げに当たらないと主張して,本件各課税処分(ただし,本件所得税課税処分については異議決定により一部取消後のもの)のうち,申告額を超える部分の取消しを求めた抗告訴訟である。
1 前提事実(当事者間に争いのない事実等)
(1) 原告による確定申告から本訴提起に至る経緯
ア 所得税について
原告の平成12年分所得税について,原告のした確定申告,異議申立て及び審査請求並びに被告のした本件所得税課税処分(更正等)及び異議決定の経緯は,別表1−1のとおりである。
イ 消費税等について
原告の平成11年分ないし平成13年分消費税等について,原告のした確定申告,異議申立て及び審査請求並びに被告のした本件消費税等課税処分(更正等)及び異議決定の経緯は,別表1−2のとおりである。
ウ 本訴の提起
原告は,被告による上記各異議決定を不服として,平成15年4月24日,国税不服審判所長に対して審査請求をしたが,3か月を経過するも,審査裁決がなされなかったため,平成16年1月27日,国税通則法115条1項1号に基づき,当裁判所に本訴を提起した。
その後,国税不服審判所長は,同年3月24日,原告の審査請求をいずれも棄却するとの裁決をしている(乙5)。
(2) 原告による建物譲受けの経緯
ア 原告は,不動産賃貸業等を営んでいるところ,昭和52年ころ,株式会社A(以下「A」といい,その代表者のBを以下「B」という。)を立会人として,C株式会社(以下「C」という。)との間で,別紙物件目録1,2記載の各土地(以下「本件高針土地」という。)を,仮設モーターショップ及びモータープールの用地として一時使用目的で賃貸する旨の契約を締結した。Cは,同地上に同目録3記載の建物(以下「本件建物」という。)を建築して,高針店として営業を開始した。
その後,原告とCとは,上記契約を更新してきたところ,平成12年4月30日,賃貸期間を平成12年5月1日から平成15年4月30日までの3年間とし,賃料は1か月62万円とする旨の「借地一時使用契約」(以下「本件賃貸契約」という。乙1)を締結(契約更新)した。
イ Cは,平成12年8月ころ,高針店を閉鎖して業務を縮小すべく,原告に対して,本件賃貸契約の中途解約について協議を申し入れ,同年9月5日付けで,これに関するC側の基本方針を内容とする文書(以下「本件申入文書」という。乙9)を作成し,原告に交付した。
本件申入文書は,Cが,@本件建物における営業を平成12年9月末日をもって休止し,同年10月中旬には閉店する予定であること,A平成13年2月分までは現行の賃料を支払うが,その間に新賃借人が現れたときは,本件建物を新賃借人に譲渡したいと思っていること,B平成13年1月末日までに新賃借人が現れないときは,原告の指示に従い本件高針土地を明け渡すつもりであることを内容としている。
ウ その後,中古車買取販売業者である株式会社D(以下「D」という。)が本件高針土地を本件建物付きで借り受けたいと申し入れてきたため,原告及びCは,平成12年11月14日,@本件賃貸契約を同月15日限り解約すること,A原告は,支払済みの同月分の賃料62万円のうち解約日以降の賃料に相当する31万円及び保証金1000万円をCに返還すること,BCは,本件建物(付属建物(油庫),構築物(門扉・塀・舗装等)及び広告塔を含む。)を原告に無償譲渡することなどを内容とする中途解約の合意をした(以下「本件合意」といい,その合意書を「本件合意書」という。乙2)。
(3) 原告による集合住宅及び駐車場の賃貸
原告は,次のとおり,その所有する集合住宅に駐車場を設けて賃貸している。
ア 「E」
所 在 名古屋市名東区大針○丁目○番地(敷地面積約476平方メートル)
戸 数 6戸
建 物 2階建て(各階3戸)
駐車場6台分
イ 「F」
所 在 名古屋市名東区大針○丁目○番○,同○丁目○番○(敷地面積合計約1610平方メートル)
戸 数 10戸
建 物 3棟(1街区4戸,2街区3戸,3街区3戸)
駐車場11台分
ウ 「G」
所 在名古屋市名東区新宿○丁目○番地
戸 数 8戸
建 物2階建て
駐車場 5台分
エ 「H」
所 在名古屋市名東区松井町○番地
戸 数 10戸
建 物2階建て
駐車場 2台
(4) 原告とI教会との間の賃貸借契約
ア原告は,別紙物件目録4記載の土地(以下「本件松井町土地」という。)を所有していたところ,同土地上に,昭和62年12月22日,同目録5記載の礼拝所(以下「本件教会」という。)が新築された(ただし,当時の床面積は,1階110.13平方メートル,2階28.56平方メートルであり,その後,平成6年7月15日に一部が取り壊され,平成7年2月19日に増築された結果,本件建物の床面積は,1階190.93平方メートル,2階69.25平方メートルにそれぞれ増床されている。)。
本件教会は,当初,原告名義で所有権保存登記されたが,いずれも真正な登記名義の回復を原因として,同年5月30日,I教会(非法人)の牧師であるJ(以下「J」という。)に対する所有権一部(持分5分の4)移転登記が,さらに,平成15年11月18日,Jに対する原告持分(持分5分の1)全部移転登記がされている(甲7)。
イ原告は,昭和62年9月11日付けで,Aを立会人として,I教会との間で,@原告は,その所有する本件教会をI教会に賃貸すること,A賃料は月額25万円とすること,BI教会は,原告の書面による承諾なくして本件教会の原状を変更してはならないことなどを内容とする「建物賃貸借契約書」を取り交した(甲8)。
原告は,平成10年ないし平成14年の各課税期間において,I教会から支払われる本件賃料収入を課税売上げとして申告し,また,所得税の申告に当たり,本件教会の取得価額800万円を減価償却して,それを必要経費に計上している(乙8の1ないし5)。
(5) 関係法令等の抜粋
ア 所得税法
2条1項21号 各種所得 第2編第2章第2節第1款(略)に規定する利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得,一時所得及び雑所得をいう。
26条1項 不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。
34条1項 一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいう。
35条1項 雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。
イ 消費税法
2条1項8号 資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(略)をいう。
4条1項 国内において事業者が行つた資産の譲渡等には,この法律により,消費税を課する。
6条1項 国内において行われる資産の譲渡等のうち,別表第1に掲げるものには,消費税を課さない。
別表第1
1号 土地(土地の上に存する権利を含む。)の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)
13号 住宅(略)の貸付け(略)
ウ 消費税法施行令
8条 法別表第1第1号に規定する政令で定める場合は,同号に規定する土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴つて土地が使用される場合とする。
エ 消費税法基本通達
(住宅の貸付けの範囲)
6−13−1
法別表第1第13号《住宅の貸付け》に規定する「住宅の貸付け」には,庭,塀その他これらに類するもので,通常,住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具,じゅうたん,照明設備,冷暖房設備その他これらに類するもので住宅の附属設備として,住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。
なお,住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても,当事者間において住宅とは別の賃貸借の目的物として,住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には,当該設備又は施設の使用料等は非課税とはならない。
(駐車場付き住宅の貸付け)
6−13−3(以下「本件通達」という。)
駐車場付き住宅としてその全体が住宅の貸付けとされる駐車場には,一戸建住宅に係る駐車場のほか,集合住宅に係る駐車場で入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており,かつ,自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合で,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものが該当する。
2 本件の争点
(1) 本件建物利益の所得区分
本件建物利益は,原告の不動産所得(被告の主位的主張)ないし雑所得(被告の予備的主張)に当たるか,それとも一時所得(原告の主張)に当たるか。
また,そもそも被告が上記予備的主張を追加することは許されるか。
(2) 本件駐車場収入の消費税等課税売上げ該当性
具体的には,本件駐車場収入が「住宅の貸付け」による収入に当たる(原告の主張)か否か(被告の主張)。
(3) 本件教会賃料の消費税等課税売上げ該当性
具体的には,I教会と原告との契約は,建物賃貸借契約(被告の主張)か,それとも土地賃貸借契約(原告の主張)か。
換言すれば,本件教会の所有者(ただし,I教会による増築後は持分権者)は原告(被告の主張)か,それともJ(原告の主張)か。
3 争点に関する当事者の主張
(1) 争点(1)(本件建物利益の所得区分)について
(被告)
ア 主位的主張−不動産所得
(ア) 所得税法26条1項は,「不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機(以下この項において「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と規定しているところ,@「不動産等の貸付けによる所得」とされて「不動産等の貸付けの所得」とされていないこと,A地上権又は永小作権の設定などによる所得を含むこと,Bいわゆる権利金が,「通常,それは賃貸人が賃借人に対して一定の期間不動産を使用収益させる対価の一部として支払いを受ける一時の所得である」ことを根拠として,不動産所得に当たると解されていること(最高裁判所昭和45年10月23日第二小法廷判決・民集24巻11号1617頁)などに照らせば,単に不動産等を貸し付けて得られる賃貸料のみを対象とするものではなく,頭金,名義書換料,更新料,収益の補償として受け取る補償金等,不動産の貸付けの開始から終了までの間に不動産等を使用させた対価として得られるすべての収入(経済的利益)を含むものと解される(なお,昭和34年の所得税法改正により,権利金のうち一定の要件に該当するものは,譲渡所得として取り扱われることとなった(同法33条,同法施行令79条等)。)。
そして,所得税法施行令94条1項2号は,不動産所得を生ずべき業務に関し,「当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するもの」につき,「その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものは,これらの所得に係る収入金額とする。」と定め,「不動産等の貸付けによる所得」には,他人に一定の期間不動産等を使用させることによって得られる収益に代わる性質を有する補償金等も含まれることを明らかにしている。また,アパート,マンション,貸事務所などの入居者から支払われた共益費や実費弁償金なども不動産所得に当たるとされており(大蔵税務協会発行の「確定申告の手引」),不動産貸付け業務に付随する収入も含まれると解される。
(イ) しかるところ,以下のとおり,本件建物の無償譲受けは,原告とCとの間で,本件賃貸契約の解除契約の一内容としてなされたものであり,その経緯からすれば,@平成13年2月分までの6か月分の賃料支払約束とA本件建物の取壊しに代えて,本件無償譲受けがなされたものであるところ,そのうち,@の賃料支払に代わる性質を有する部分は不動産所得に当たり,Aの収去義務を免れることに代えた部分は不動産所得に当たらないが,両者の範囲を区別することが困難であるため,全体として不動産所得に当たると解すべきである。
すなわち,a 本件賃貸契約は期間の定めのある賃貸借契約であったから,解約権を留保していなかった借主であるCは,定められた契約期間の拘束を受けており,同契約を中途解約するためには,合意解約する以外に手段はなかったところ,高針店の採算性に問題があったことから,平成12年10月中に閉鎖撤退することを決定し,原告に対し,4か月分の賃料の支払の提示と本件建物の買取りの打診を試みた。
これに対し,原告は,双方で新たな借主を探すことを前提として中途解約に応ずる意向を示したものの,6か月分の賃料の支払を求めるとともに本件建物の買取りを拒絶した。
この6か月分の賃料は,原告からみれば,本来賃貸借期間は3年間であるのに,約定に反して2年以上を残して契約の解除を申し込まれているのであるから,違約金あるいは本件賃貸契約に係る賃料収入を得られなくなる損失の補償としての意味を持つものと考えられる。
b その後,双方の協議を経て,Cは,平成12年9月5日付けで,本件申入文書を作成し,原告に交付したところ,同文書には,@Cが平成13年2月分までの賃料を支払うこと,A本件建物は,同年1月末までに,新賃借人が現れたときには,新賃借人に譲渡することを希望すること,B上記期限までに新賃借人が現れないときは,本件建物の処理について原告の指示に従い,本件高針土地を明け渡すこと,以上の内容が記載されている。
このように,Cが,原告の要求を全面的に受け入れたのは,前記のとおり,原告が合意解約に応じない限り,本件賃貸契約は存続し,Cが賃料支払義務を免れることはできないところ,Cとしては,解約申入れからわずか2か月後である平成12年10月には営業所を閉鎖することを決定していた以上,できるだけ早期に合意解約を成立させたいという希望が強かったからにほかならない。そして,平成13年2月分までの賃料支払約束部分は,本件賃貸契約を解消する条件として盛り込まれたものであり,いわば違約金ないし損失保証金として支払う旨申し込まれたものと考えられる。
c しかし,その後,Dが本件高針土地を借り受け,本件建物をそのまま使用したい旨申し出たため,原告は,本件建物の取壊し要求を撤回し,これをそのまま残すことを認める方針に変更し,平成12年11月14日,Cとの間で本件合意をしたものである。
そこにおいては,従前,平成13年2月分までの支払が検討されていた賃料相当額について,これを支払わない(既に支払済みの平成12年11月分についても半額を返還する。)代わりに,本件建物を無償譲渡することが合意されている。
d したがって,本件建物の無償譲受けは,原告が,Cとの合意解約によって生ずる損失を回避し,速やかに原告が新賃借人であるDとの賃貸借契約を締結できるような形態で本件賃貸契約を解約するためにとられた措置であり,本件合意の一内容をなすものである。
このことは,本件合意書をの文面を起案したK株式会社の社員であるLが,同書面の1条は,2条以下の条項の内容を条件としていると考えている旨供述していることからも明らかである。
このような経緯によれば,当初,本件賃貸契約の合意解約に応ずる条件として,原告がCに要求していた6か月分の賃料の支払は,原告からみれば,本件賃貸契約の中途解約による違約金として,あるいは,解除に応じた場合に賃料収入を得られなくなるという損失の補償としての意味を持つものであって,不動産貸付け業務に付随する収入であり,仮にこれが支払われれば,不動産所得に当たると認められるものである。
したがって,本件建物利益も,上記6か月分の賃料の支払に代えて本件合意の内容とされたもの,あるいは,本件合意に基づいて得られたものであり,原告の不動産貸付業務に付随する収入であるから,6か月分の賃料同様不動産所得に当たるというべきである。
(ウ) この点について,原告は,本件建物利益が一時所得に当たると主張するが,一時所得は,営利を目的とする継続的行為から生ずる所得以外の所得で,労務その他の役務又は資産の譲渡の対価たる性質を有しない,臨時的,偶発的に発生する所得であるところ,本件建物の無償譲受け自体は,一見すると一時的・偶発的であるが,実質的には,本件賃貸契約の中途解約及び保証金の全額返還等を容認する見返りに得た所得であり,同契約の終了に当たって,権利関係を清算するために行われたものであるところ,不動産の賃貸借契約の終了に当たって,権利関係を清算することは偶発的なことではなく,むしろ,継続的,恒常的なことであるから,本件建物利益は一時所得には当たらない。
イ 予備的主張−雑所得
(ア) 仮に,本件建物利益が不動産所得に該当しないとしても,所得税法35条1項は,「雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいう。」と定めているところ,前記のとおり,本件建物利益は一時所得に該当せず,また,利子所得,配当所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得のいずれにも該当しないことも明らかであるから,雑所得に当たることになる。
(イ) なお,原告は,被告による予備的主張の追加が許されないと主張するが,一般に,更正処分取消請求訴訟における理由の差替えは,これを認めたのでは,青色申告に対する更正処分の理由附記制度を全く無意義ならしめるような場合,若しくは,これを認めることが納税者の正当な利益を害するような特段の事情がある場合以外は広く認められる(最高裁判所昭和56年7月14日第三小法廷判決・民集35巻5号901頁)ところ,本件において,被告が本件建物利益が雑所得に該当するとの予備的主張を追加したとしても,主位的主張と予備的主張には,基本的な課税要件事実の同一性があり,また,所得金額及び納税額を変更するものではない。
したがって,納税者の正当な利益を害するような特段の事情がある場合には当たらないから,上記予備的主張の追加(理由の差替え)が許される。
(原告)
被告の主張は争う。
ア 不動産所得の非該当性
(ア) 不動産所得とは,不動産の貸付けによる所得であるから(所得税法26条1項),賃料収入,使用料相当損害金,違約金等の不動産の果実と評価されるべきものに限定される。
しかるところ,本件建物の無償譲受けは,後記のとおり,本件建物の取壊し費用の支出を避けたいとのCの意向を慮り,これに応じた結果,行われたにすぎず,被告の主張するように,本件賃貸契約を合意解除する前提,条件又は要求などに基づくものではなく,また,6か月間の賃料の支払に代わるものとか,中途解約及び保証金の全額返還等を容認する見返りに得たものとか,平成13年2月分までの賃料支払約束と本件建物の取壊しに代えてなされたものではないから,本件建物利益が,不動産の賃料収入でないことはもちろん,不動産の果実として評価できるものでないことは明らかであり,不動産所得に該当しない。
なお,被告は,その主張を立証すべく,実質的な陳述書である「聴取書」(乙10ないし12)を提出しているにもかかわらず,その作成者の証人申請をしていない。
その理由は,原告による反対尋問を行うと都合が悪いからとしか考えられない。
このような書証の提出は,信義則に反し公平性を欠くから,却下されるべきである。
(イ) 被告は,賃貸借契約を契約期間の途中で合意解約すれば,賃貸人は,賃借人に対し,残存契約期間に対応する賃料相当損害金請求権を取得するがごとき主張をしているが,全く誤りである。合意解約すれば,契約は終了するのであるから,残存契約期間について賃料相当額の損害金請求権が発生することはない。
また,被告の主張のとおりであれば,賃貸借契約が合意解約された場合に,その後,新賃借人が見付からないとすれば,賃料相当額の損害が生じることになるが,これが法律上の損害でないことは明らかであり,まして,旧賃借人に対して請求できる損害であると解する余地はない。
被告の主張は,被告が勝手に創作した事実ないし幻影に基づく主張にすぎない。
(ウ) 被告は,さらに,所得税法施行令94条1項2号を引用して本件建物の無償譲受けにより,原告が受けた経済的利益は,不動産の貸付け業務に付随した所得であるとも主張する。
しかしながら,同号は,不動産所得を生ずべき業務の休廃止等によって失われた収益の補償として受け取った補償金などで,当該業務の遂行によって生ずる収入金額に代わるものについては,不動産業務の付随収入として不動産所得の収入金額に算入するというものであって,その対象は不動産の貸付け業務に直接の関連性のあるものに限られる。
そして,大蔵税務協会発行の「確定申告の手引」においても,入居者からの水道光熱費や共益費の支払を受けた場合,貸付け建物を破損した場合の実費弁償金,解除に伴い明渡しが遅滞した場合における損害賠償金などが付随収入に当たると解されているが,合意解約に伴う借地上の建物の無償譲受けが,不動産の貸付け業務と直接関連すると解する余地はない。
(エ) なお,被告は,所得税法26条が「不動産等の貸付けによる所得」と規定していて,「不動産等の貸付けの所得」と規定していないことを根拠に,不動産等の貸付けの開始から終了までに係る所得を含むものであると主張する。
しかしながら,日本語としての「貸付けによる所得」と「貸付けの所得」は,表現が異なるだけで,同一の内容を意味しているとしか考えられないから,上記主張は理解不能であり,また,不動産等の貸付けの開始に際して授受される権利金が譲渡所得となる場合があるとの主張とも矛盾している。
また,被告が,不動産所得に当たると主張する頭金,名義書換料,更新料,収益の補償として受け取る補償金等は,すべて不動産の果実として評価し得るものであるから,一見すると,被告は原告の上記主張を争っているように見えるが,実質的には原告の主張が正当であることを認めているものである。
(オ) もともと,被告のM上席国税調査官は,平成14年7月22日,原告及び税理士からの説明に納得して一時所得として申告することを了解したものの,同年8月6日,一方的に前回の発言を撤回する,あの発言はなかったものとして取り消すと述べ,同年11月14日,N特別国税調査官とともに,原告に対して,具体的な否認の理由を示すことなく,修正申告書の提出を半ば強要したものである。
その後も,被告は,本件更正処分等や異議決定においては,「借地一時使用契約の解約と本件建物等の無償譲渡は一体であり,不動産所得の業務に関して本件建物等の無償譲渡という経済的利益を得たもの」と主張し,被告第1準備書面では,「本件無償譲受けによって,原告が得た経済的利益は,本件土地の賃貸契約を終了するに当たり,権利関係を清算するために受けたものであり,……不動産等貸付けによる所得に該当する」と主張し,被告第4準備書面では,「本件建物の無償譲渡は,6か月分の賃料の支払に代えて行われたもので,当該賃料の支払は中途解約による違約金あるいは損失の補償金であるから,不動産所得に該当する」と主張するなど,一貫しない。
このように,被告は,一方的に原告の申告を否認するだけでその主張に耳を傾けようとせず,不誠実な態度をとり続け,その間何度も否認の理由を変更,訂正,追加するなどして今日に至っているのであり,このことは,本件各処分が法律上の根拠なくなされたことの証左である。
イ一時所得の該当性
一時所得は,利子所得,不動産所得等の所得に該当しないもののうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうとされている(所得税法34条1項)とおり,利子所得から譲渡所得までの個別の所得に該当しない一時的・偶発的な所得を指す。
ところで,平成12年7月,Oのリコール隠しが発覚し,名古屋地区における販売会社であるCも,高針店における営業を断念して撤退することになった。
原告は,Cとは昭和52年からの長い付き合いであり,Cの置かれている状況も報道等から知っていたので,協議の上,本件建物を撤去する費用を節約できるように,Cが原状回復に代えて本件建物の無償譲渡をすることになったのである。原告は,これによって,本件建物の価値相当額の所得を得たが,当該所得は,上記のとおり,不動産所得に当たらず,しかも,原状回復義務の履行に代えて建物等の無償譲渡を受けることは,土地の賃貸借契約において通常必ず行われることではなく,異例の取扱いであるから,上記所得は一時的かつ偶発的な所得に当たり,一時所得に該当する。
この点について,被告は,不動産賃貸借契約の終了に当たって権利関係を清算することは,一時的なことでも偶発的なことでもないから,本件建物利益は一時所得に当たらず,したがって不動産所得に当たると主張するが,通常,清算は,継続的契約関係を終了するために行われるものであって,清算に伴って新たな所得が生じることはなく,清算に伴って具体的に何を原因として所得が生じたかが議論されるべきであるし,所得税法の規定からすれば,不動産所得該当性が否定されて初めて一時所得該当性が問題となるはずであるから,一時所得に該当しないことを理由に不動産所得に該当すると判断されることはあり得ない。
ウ 雑所得の非該当性
(ア) 所得税法155条2項は,青色申告の場合,更正処分をしようとするときは理由を附記しなければならないと規定しているところ,更正処分に理由附記の瑕疵があるときは,その後の不服審査手続において処分理由が明らかにされても,処分の瑕疵は治癒されない。
もっとも,被告の引用に係る最高裁判所昭和56年7月14日第三小法廷判決は,当該事案に限って理由の差替えを認めたが,当該事案は取得価額に関する主張の変更を認めたにすぎず,常に理由の差替えを認めたものではない。
しかるところ,本件建物利益が雑所得に該当するとの被告の予備的主張の追加は,所得税法26条が適用されるとの主張に同法35条が適用されるとの主張を追加するものであり,根拠法条を変更するものであって違法な理由の差替えに当たるから,許されるものではない。
(イ) 仮に,理由の差替えが許されるとしても,被告は,本件建物等の無償譲渡による所得は,原告が営利を目的として継続的に行っている不動産貸付け業務に係る所得であるから,雑所得であると主張するが,前記のとおり,本件建物の無償譲受けは,原状回復義務の履行の代わりに行われた無償贈与であり,継続的行為ではないから,雑所得に該当しないことは明らかである。
(2) 争点(2)(本件駐車場収入の消費税等課税売上げ該当性)について
(被告)
ア 駐車場付き住宅の貸付けと消費税等の課税対象取引
消費税法6条及び同法別表第1の13号は,一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除き,住宅の貸付けは非課税である旨規定し,同法施行令8条は,「法別表第1第1号に規定する政令で定める場合は,同号に規定する土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴つて土地が使用される場合とする。」と定めている。
したがって,駐車場の利用に伴って土地が使用される場合の使用料は,原則的に課税売上げに当たる。
ただ,上記のとおり,住宅の貸付けが非課税であることの関係上,「住宅の貸付け」の範囲については,「庭,塀その他これらに類するもので,通常,住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具,じゅうたん,照明設備,冷暖房設備その他これに類するもので住宅の附属設備として,住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。
なお,住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても,当事者間において住宅とは別の賃貸借の目的物として,住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には,当該設備又は施設の使用料等は非課税とならない。」(消費税基本通達6−13−1)と解され,駐車場付き住宅の貸付けについて,「駐車場付き住宅としてその全体が住宅の貸付けとされる駐車場には,一戸建住宅に係る駐車場のほか,集合住宅に係る駐車場で入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが割り当てられる等の場合で,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものが該当する。」(本件通達)と取り扱われている。
このように,駐車場の貸付けは原則的に消費税等の課税対象取引であるところ,本件通達が例外的に非課税としている「駐車場付き住宅としてその全体が住宅の貸付けとされる駐車場」の要件については,税負担の公平の原則に照らし,安易に拡大解釈すべきではない。
イ F及びEの駐車場収入
Fの駐車場11台分のうち1台分については,住宅の賃貸借契約とは別に駐車場使用契約を締結しており,Eの駐車場6台分については,各賃貸借契約中に,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料が定められている。
そうすると,上記の駐車場の貸付けは,全体が住宅の貸付けに当たると取り扱うことはできないから,消費税等の非課税取引には当たらない。
ウG及びHの駐車場収入
原告が認めるとおり,Gは,住宅が8戸あるのに対して,同一敷地内には駐車場が5台分しかなく,Hも,住宅が10戸あるのに対して,同一敷地内には駐車場が2台分しかないから,これらについては,入居者各戸に駐車場が割り当てられるわけではないところ,駐車場を借りている者との賃貸借契約は,それぞれ家賃とは別に駐車料を定めており,住宅とは別の賃貸借契約の目的
物とされていることから,その全体が住宅の貸付けとされる駐車場と認めることはできず,その収入は,課税売上げとなる。
(原告)
被告の主張のうち,Fの駐車場11台分のうち1台分については,住宅の賃貸借契約とは別に駐車場使用契約を締結しており,Eの駐車場6台分については,各賃貸借契約中に,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料が定められていること,Gは,住宅が8戸あるのに対して,同一敷地内には駐車場が5台分しかなく,Hも,住宅が10戸あるのに対して,同一敷地内には駐車場が2台分しかなく,駐車場を借りている者との賃貸借契約は,それぞれ家賃とは別に駐車料を定めいること,以上の事実は認めるが,その余は争う。
ア 駐車場付き住宅の貸付けと消費税等の課税対象取引
(ア) 消費税法6条,同法別表第1の13号によれば,住宅の貸付けは非課税とされているが,駐車場については特段の規定がない。
したがって,駐車場の貸付けが住宅の貸付けと一体であると認められる場合には,非課税と取り扱われるところ,この判断は,経済的な実体関係に照らして行うのが消費税法の趣旨であると考えられる。この点について,被告は,集合住宅に係る駐車場で入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されており,かつ,自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合で,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものが非課税とされる住宅の貸付けに該当するとした上で,1通の契約書を作成し,かつ賃料額も1個の記載しかない契約書でなければ非課税とはならない旨主張する。
しかしながら,これは,本件通達でそのように定めているにすぎず,法律にそのような規定はないから,契約書の異同とか賃料の定め方といった形式だけで上記一体性を否定すべきではない。本件通達の文言も,「……自動車の保有の有無にかかわらず割り当てられる等の場合で,……別に駐車場使用料等を収受していないものが該当する。」とされているように,その解釈適用に含みを持たせており,実体に照らして判断すべきことを示している。
また,1戸当たり1個の駐車場があったとしても,駐車場を借りない人,駐車場を1台分だけ借りる人,2台分借りる人,途中で駐車場が不要になった人,途中から借りる人があり得るが,それぞれの場合に,契約の実体に照らせば住宅と一体となった駐車場の貸付けと評価し得るはずであり,そのような場合に,賃料額が異なるのは社会通念上当然であって,契約書が1通であるとか賃料額の約定が1個でなければ適用がないと考えることは不可能である(なお,住宅を借りる人は,必ず駐車場も借りなければならないという契約は,独占禁止法の趣旨に反し違法である。)。
(イ) ところで,実質的な一体性を認めるためには,概ね,@住宅専用の駐車場が存在し,かつ住宅1戸に対して1台以上の駐車場が存在すること,A住宅を借りれば,必ず1台以上の駐車場を借りられること,B住宅のみを借りて,駐車場を借りない賃借人がいた場合に,当該空いた駐車場を第三者に貸さないことなどの要件を満たすことが必要とも思慮される。もっとも,@の要件については,駐車場の数が住宅のそれよりも少ない場合でも,駐車場から見れば必ずどれかの住宅と一体となっていると考え得るし,駐車場の数が住宅のそれよりも多い場合でも,超えた部分の駐車場から見ればどの住宅と一体となっているかの問題が生じ得るから,合理的な要件とはいえない。
また,現在は自動車を所有している家庭がほとんどであり,アパートを建築するには駐車場付きでなければ,周辺地域に不法駐車が横行するため,駐車場付きとするよう行政指導がなされている現状においては,通達の「入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保される」という要件は,必ずしも必須ではなく,建物の賃貸借契約と駐車場のそれとが実質的に一体であれば,消費税等の非課税要件は充たしていると解すべきである。
イ Fの駐車場収入
本件通達は,消費税の非課税要件として,「入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されて」いることを定めているが,1戸当たり1台分以上の駐車スペースが確保されていれば,必然的に,1戸で2台の契約をするところがあることを前提としていると解されるところ,Fについては,住宅が10戸あり,駐車場は11台分ある。
そして,各住宅には1台分あての駐車場が賃貸されているほか,1戸については,2台分の駐車場が割り当てられている。
そうすると,上記通達に該当することが明らかである。
被告は,駐車場11台分あるうちの10台分は消費税の課税対象外であることを認めながら,1台分については課税対象となると主張するが,1人の入居者が2台分の駐車場契約をしている場合に,その1台分は非課税となるが他の1台分は課税対象となるとの根拠は見出し難い。
ウEの駐車場収入
Eは,住宅が6戸あるのに対し,駐車場は6台分ある。
そして,各住宅に1台分あての駐車場が割り当てられており,仮に,自動車を所有していない入居者があり,駐車場に空きがあったとしても入居者以外の者に貸し付けられることはない。原告は,家賃・共益費・駐車場使用料等を一体のものとして契約し,その合計額を銀行振込みで収受しており,本件通達が正しいとしても,その定める要件を満たしているから,消費税の非課税取引に当たる。
エ G及びHの駐車場収入
Gは,住宅が8戸あるのに対し,同一敷地内には駐車場が5台分しかないし,Hは,住宅が10戸あるのに対し,同一敷地内には2台分しかない。
しかし,前記のとおり,一体として契約されていれば,消費税の非課税取引に該当すると解すべきであるから,10戸に対し2台分しかないのは問題があるとしても,少なくともGについては一体のものと評価すべきであり,非課税取引に該当する。
(3) 争点(3)(本件教会賃料の消費税等課税売上げ該当性)について
(被告)
原告は,本件教会の所有者(増築後は持分権者)として,I教会と建物賃貸借契約を締結したのであるから,その賃料収入は課税売上げに当たる。
すなわち,
ア 建物賃貸借契約の締結
原告とI教会は,昭和62年9月11日付けで建物賃貸借契約を締結しているところ,その際,不動産業者であり宅地建物取引主任者の資格も不動産取引の十分な経験も有するAのBが立会業者として関与しており,対象物件が土地か建物かという契約の本質に関する部分に実体との齟齬が生ずるはずがない。
また,その契約書の各条項も,本件教会が原告の所有であることを前提としており,各条項は,Jの要望に基づいて建築された建物であるという実体を踏まえて10年後の賃料改定に至るまできめ細かく規定しているにもかかわらず,将来の所有名義の移転の可能性や将来土地賃貸借契約として更新される可能性等について何ら規定していない。
イ 増築時の合意
本件教会が増築される(平成7年)に際して,原告とI教会との間で作成された平成6年7月3日付け「建物建築合意書」においても,増築建物の使用期間は平成17年12月末までの10年間に限られ,当該期間が満了した場合には,I教会は,自己の負担で増築建物を撤去して原状に復する旨の記載があるが,増築部分以外の本体部分についての撤去義務についての定めがなく,この点は,当初の賃貸借契約書で建物を原状に回復して返還するべき義務が定められているだけである。
仮に,当初から本件教会がJの所有であったとすれば,増築後の本件教会全体について撤去義務ないし原告に対する買取請求権が発生するはずであり,増築部分に限定する必要はない。
ウ 原告の申告
原告は,昭和63年から平成14年までの15年間にわたり,I教会からの賃料収入を課税売上げとして申告しており,当該収入が地代収入である旨の主張は,審査請求に至って始めてなされたものであり,また,平成11年分ないし平成14年分の所得税の確定申告に際しては,本件教会の取得価額を800万円として「減価償却費の計算」の欄に記載し,不動産所得の金額の計算上必要経費に算入している。
仮に,実体が土地の賃貸借であるにもかかわらず,建物賃貸借の形式をとっていただけであったならば,そのように申告した方が税負担が軽くなる以上,15年間のうちに修正する必要に気づいたはずであり,特に,平成7年の増築,平成10年の賃料改定など,契約を見直す機会があったことに照らせば,なおさらである。
このことは,平成7年の増築後も,原告が持分権者としてI教会に本件教会を賃貸していたことを自認していたことを意味し,建物賃貸借契約の形式が実体に適っていたことを示している。
エ 本件教会の登記
本件教会については,昭和63年1月11日受付をもって原告を所有者とする所有権保存登記と,同月22日受付をもって債権額800万円,債務者を原告とする抵当権設定登記がなされている。
オ 譲渡担保設定契約の主張に対する反論
原告は,本件教会の建築代金のうち800万円の融資を受けて,これをさらにI教会に貸し付け,10年間で分割して返済を受けることし,その返済が完済したときに教会の建物の所有権を原告からI教会に移転するとの譲渡担保設定契約を締結した旨主張するが,同主張は本訴に至って初めてされたものであり,しかも,同契約が成立したことを示す証拠もない。
本件教会の登記簿上も,平成6年7月15日に一部取壊し,平成7年2月19日に増築の表示登記がなされているが,真正な登記名義の回復を原因とするJに対する所有権一部(持分5分の4)移転登記は同年5月30日になされており,当初からJの所有であったにしては時期が遅い上に,なぜ,この時期に持分5分の4の移転登記がなされたのか不明である。さらに平成15年11月18日受付をもって,Jに対する原告持分(持分5分の1)全部移転登記がなされているが,原告の主張する10年間の分割返済が終了した平成9年からかなり期間が経過した後になされているのは不自然である。
カP税理士の証言に対する疑問
原告の主張は,本件審査請求時に,補佐人であるP税理士(以下「P税理士」という。)が調査して,土地賃貸借契約であると判明したというものであるから,P税理士の証言の信用性は極めて重要であるところ,審査請求段階では,平成9年12月16日付けで本件教会の所有権がJに移転し,同日付けで建物賃貸借から土地賃貸借に切り替わった旨,本訴における原告の主張と異なる主張をしていたにもかかわらず,法廷においては,「そのような主張をした覚えがない」旨の客観的証拠に反する虚偽の証言をしており,信用できない。
キ 原告提出の書証に対する反論
また,原告が提出した書証によっても,その主張を認めることはできない。
まず,本件教会の「工事請負契約書」(甲6)については,その請負代金欄に「950万円の内150万円」との記載があるから,残りの800万円を負担する工事発注者が存在したことが明らかであるところ,原告がその発注者であると認めるのが自然である。
次に,A作成のメモ(甲9)は,あくまで家賃の計算のためのものであり,「借入金」も原告が金融機関から借り入れたことによる「建築関係諸費用」として記載されているから,土地賃貸借を基礎付けるものではない。
不動産取得税納税通知書等(甲10)は,原告に納税通知された不動産取得税をJが負担したことをうかがわせるが,これは,平成7年に本件教会を増築したことに対するものであるから,自らの費用で増築し,増築分名義を有するJが負担することはむしろ当然であって,これをもって昭和62年当時から存在した本件教会がJの所有であったことを示すものとはいえない。
さらに,Aから原告にファックス送信された賃料改定の通知書(甲11)も,契約締結から10年が経過して建物の償却が終了したことから,当初の賃貸借契約の9条4項に基づいて,賃料を計算したものにすぎないから,当初から土地賃貸借契約が存在したことをうかがわせるものではない。
(原告)
被告の主張は争う。
原告とI教会との賃貸借契約は,本件松井町土地に関するものであり,その賃料は地代であるから,課税売上げには該当しない。
すなわち,以下のとおり,原告とI教会との間では,法律的には,本件松井町土地についての建物所有目的の賃貸借契約と金銭消費貸借契約,並びに譲渡担保設定契約が締結されたと解すべきである。
ア I教会による建築と譲渡担保設定契約
原告は,昭和62年ころ,古くからの親しい知人であるJから,I教会のために,本件松井町土地を教会を建てる敷地として借りたいという申入れを受けた。
原告は,これを快く了承し,同じように古い友人であるBの経営するAに仲介を依頼した。
本件教会の建築工事を発注したのは,I教会である(甲6)。
もっとも,I教会は請負代金全額を自己資金で賄えなかったため,原告は,I教会に対し,建築資金として東海銀行から融資を受けた800万円を貸し付け,10年間で分割返済することを合意したが,その月額返済額に原告が負担することになった諸費用を加えた月額8万2877円と地代相当額16万7123円を合わせて,月額賃料を25万円とした(甲9)。
本件教会の所有名義を原告にしたのは,原告とI教会との信頼関係が厚かったため,互いに深く検討することなく,原告名義で登記をし,上記金銭消費貸借の分割返済が完済したときに,I教会に名義移転することを合意したためであり,いわば,譲渡担保設定契約を締結したと解すべきである。
イ 建物賃貸借契約書の誤り
ところが,Aは,本来なら本件松井町土地の賃貸借契約書,金銭消費貸借契約書,譲渡担保設定契約書を作成すべきところ,建物の所有名義が原告であることから,誤って建物賃貸借契約書を作成してしまい,原告もI教会も,深く検討することなく,同書面に署名してしまった。
また,P税理士も,上記事情を知らされることなく,前年分の所得税の確定申告書と建物賃貸借契約書のみ示されたため,建物賃貸借に基づく家賃収入として計上し,確定申告書を作成してきたものである。
ウI教会による増築など
なお,I教会は,平成7年に入り,本件教会を増築しているが,その際に原告が負担した不動産取得税はI教会に求償されている(甲10)。
上記増築に際しては,費用全額をI教会が負担したので,この点を明確にすべく,Jに対する所有権一部(持分5分の4)移転登記をした。
その後,I教会の原告に対する借入金の分割返済が終わったため,貸金返済分を値下げするとともに,地代を値上げして月額20万円の地代にすることが合意されている(甲11)。

第3 当裁判所の判断

1 争点(1)(本件建物利益の所得区分)について
(1) 不動産所得の該当性について
ア 不動産所得について
所得税法上,不動産所得とは,不動産,不動産の上に存する権利,船舶又は航空機の貸付けによる所得であって,事業所得又は譲渡所得に該当するものを除いたものをいう(26条)ところ,ここでいう不動産等の貸付けとは,これによって貸主に一定の経済的利益をもたらすものであるから,有償双務契約である賃貸借契約(民法601条)がその中心となる(もっとも,これと同類の経済的目的を達する地上権や永小作権の設定も含まれる。)。
ところで,「貸付けによる」とは,「貸付けに基づいて」あるいは「貸付けを原因として」を意味すると解されるところ,賃貸借契約は,当事者の一方が相手方にある物の使用及び収益をなさしめることを約し,相手方がこれにその賃金(賃料)を払うことを約束することによって成立する契約である(民法601条)から,「貸付けによる所得」とは,借主から貸主に移転される経済的利益のうち,目的物を使用収益する対価としての性質を有するものを指すというべきである。
その典型例は,使用収益する期間に対応して定期的,継続的に支払われる賃料である(もっとも,その支払の態様については各種のものがあり得る。)が,これに限られず,権利金,礼金,更新料,転貸承諾料などのように,目的物を使用収益し得る地位を取得,確保する対価として一時的に支払われる経済的利益も,広い意味では目的物を使用収益する対価たる性質を有するから,「貸付けによる所得」に含まれ得る(権利金につき最高裁判所昭和45年10月23日第二小法廷判決・民集24巻11号1617頁参照)し,当該使用収益は,必ずしも有効な契約関係に裏付けられている必要はないから,占有権原を有しない者が使用収益したことに基づいて支払われる賃料相当損害金も,これに含まれ得るというべきである。また,事業所得との区別の観点からすれば,不動産所得を生ずべき業務に関し,当該業務の全部又は一部の休止,転換又は廃止その他の事由により当該業務の収益の補償として取得する補償金その他これに類するものについて,その業務の遂行により生ずべきこれらの所得に係る収入金額に代わる性質を有するものも,不動産所得に該当するとされている(所得税法施行令94条1項2号)。
しかしながら,不動産所得は,あくまでも,貸主が借主に対して一定の期間,不動産等を使用又は収益させる対価としての性質を有する経済的利益,若しくはこれに代わる性質を有するものに限定されるのであって,およそそのような性質を有しないものは,これが借主から貸主に移転されるとしても,含まれないというほかない。
そのような経済的利益が不動産所得に含まれるとの解釈は,前掲法条の文言に反する上,所得税法が,所得を10種類に分類し,担税力に応じた課税を行うために,その所得の性質によって,回帰的に生ずるものとそうでないものとに分け,とりわけ回帰的に生ずる所得の中でも不労所得性の強い資産所得の性質を有する不動産所得については,給与所得に認められる給与所得控除(28条),臨時的所得に講ぜられる累進負担の緩和措置(22条2項)等の定めを設けず,役務の対価の要素を有する事業所得に認められる資産損失の必要経費算入についても,不動産事業に該当しない場合には無条件には認められず(51条4項),必要経費を控除して所得額に応じた累進課税を課することとしていることに照らすと,不動産所得の概念につき,合理的な根拠なくして拡大解釈を行うことは,租税法律主義の観点から,認めることができないというべきである。
イ 被告の主張の変遷について
この点につき,原告は,被告の主張が一貫していない旨主張するところ,なるほど,被告は,@本件所得税課税処分においては,「借地一時使用契約の解約に伴って本件建物等の無償譲渡契約が締結されており,借地一時使用契約の解約と本件建物等の無償譲渡は一体であり,不動産所得の業務に関して本件建物等の無償譲渡という経済的利益を得たものであること」をもって本件建物利益が不動産所得に当たる理由としており(甲1),使用収益の対価性の有無について触れることなく,不動産所得を生ずる業務との間に何らかの関連性を有する経済的利益であれば,不動産所得に当たるかのように主張し,A異議決定(甲4)や審査請求手続(乙5)においても,同様の主張をし,本訴の提起後も,B平成16年3月11日付け答弁書においては,上記と同様の主張をしていたが,C同年4月16日付けの第1準備書面においては,Cは,契約期間の中途で解約を申し出た以上,本来ならば,期間終了時までの賃料を支払い,かつ本件建物を収去すべき義務を負担するが,原告としても,1000万円の保証金ではこれらの担保として足りず,新たな借主との契約が可能かなどについて不透明な状況にあったことから,「原告が得た経済的利益は,本件土地の賃貸契約を終了するに当たり,権利関係を清算するために受けたもの」であるから,不動産所得に当たる旨記載し,「権利関係を清算するために」交付されたことが不動産所得性を基礎付けるかのように主張し,D同月26日付けの第2準備書面においては,雑所得に当たるとの予備的主張を追加したが,E同年8月16日付け第4準備書面に至って,Cの主張を一部
撤回した上,「本件建物の無償譲受けは,原告とCとの間で,本件使用契約の解除契約の一内容として,本件使用契約が合意解除されなければ原告が取得することができた本件使用契約の対価たる経済的利益に代えて,その補償ないし賠償の特約として合意されたものであり」,「最終的には,(本件申入文書)の時点で合意されていた平成13年2月分までの賃料支払約束と本件建物の取壊しに代えて,本件無償譲受けがされた」のであるとして,「不動産等の貸付けの対価の補償として,不動産等の貸付けの対価に代わる性質を有する」ことが不動産所得性を基礎付ける旨主張し,F同年11月30日付け第5準備書面においても,同様の主張をした上,同年12月6日の第6回(最終)口頭弁論期日において,本件建物利益の不動産所得性を基礎付けるものは,平成13年2月分までの賃料支払約束に代わる部分であり,本件建物の収去義務を免れることに代わる部分ではないが,両者の部分を区別することが困難であるため,全体が不動産所得に当たる旨釈明したこと,以上の事実が認められる。
これらを通覧すれば,不動産所得に関する被告の主張が変遷していることは否定できず,とりわけ,@ないしCの主張には理解し難いところがある。
しかしながら,上記の各主張が互いに完全に矛盾しているとまではいえず,不服申立手続や訴訟の進行具合などに応じて,あいまいなものから次第に精密なものに変化し,最終的にはFのように整理されたと解することができるから,このことだけをもって,本件各処分が法律上の根拠なくして行われたものであると即断することは相当でない。
ウ 本件建物利益の不動産所得該当性について
そこで,以上を前提として,本件建物利益が不動産所得に該当するか否かについて検討する。
(ア) 前記前提事実(2)及び証拠(甲19の1・2,20,乙1,2,5,9ないし15)を総合すれば,以下の事実が認められる(なお,原告は,被告が提出した乙10ないし12について,これらは実質的な陳述書に当たるにもかかわらず,作成者の証人尋問をしないことなどを理由に,書証の申出を却下すべき旨主張する。
なるほど,実質的な反対尋問権の保障の重要性については指摘のとおりと考えられるが,民事訴訟においては,これをどこまで貫くかは裁判所の合理的な訴訟指揮に委ねられているというべきところ,本件事案の内容,前掲各書証の作成の経緯,原告側からも作成者の証人尋問の申請がないことなどを考慮すると,本件においては,上記理由をもって前掲各書証の申出を却下すべきものとはいえない。)。
a 原告は,昭和52年ころ,Cとの間で,本件高針土地を,仮設モーターショップ及びモータープールの用地として一時使用目的で賃貸する旨の契約を締結し,その後,同契約を更新し,平成12年4月30日,賃貸期間を平成12年5月1日から平成15年4月30日までとする旨の本件賃貸契約を合意した。
b 本件賃貸契約の合意に際して作成された「借地一時使用契約書」と題する契約書には,次のとおりの記載がある。
「2条(賃貸借期間)
賃貸借期間は平成12年5月1日より平成15年4月30日までの3年間とする。
但し,期間満了の6ケ月前までに甲(原告)乙(C)いずれからも別段の意思表示のないときは,本契約は更に3年間継続更新されるものとし,以後もまた同様とする。
3条(賃料)
賃料は1ケ月当たり62万円也とし毎月末日限りその翌月分を甲の指定する下記銀行口座に振込支払うものとする。(以下略)
5条(認諾事項)
乙は次の場合には予め甲の承諾を得ることを要する。
1 借地を前記目的以外の目的に使用しようとするとき。
2 借地の現形又は用方を変更し若しくは土砂を採取しようとするとき。
3 借地を自ら使用せずに他に転貸又は賃借権を譲渡しようとするとき。
9条(明渡義務)
1 乙は第2条所定の期間満了の場合には遅滞なく地上物件を収去して原状更地につくを貸主に明渡し返還しなければならない。
2 乙が前項の収去を怠るかその他正当の事由がなくて完全に本借地を明渡し返還しないときは之を使用収益すると否とに拘わらず返還完了に至たるまで其の当時の賃料と同額の金員を損害賠償として甲に支払わなければならない。
11条(保証金)
乙は其の債務の履行を担保する為保証金として1000万円也を本契約締結と同時に支払うものとする。
甲は賃借物件の完全な返還を受けたときは直ちに保証金を乙に返還するものとする。
但し保証金には利息を付けない。
12条(保証金充当)
甲は乙が賃料その他本契約に因って負担する金銭債務の履行を怠ったときは何等特別の意思表示を要しないで何時でも前記保証金を以て其の弁済に充当することができるものとする。」
c Cは,平成12年8月ころ,業務縮小のため,本件高針土地にある高針店を閉鎖することを決定し,総務課長であるQが中心となり,K株式会社を通じて,本件賃貸契約の中途解約を申し入れ,原告側のAのBとの間で交渉を開始した。Cは,当初,高針店を閉店する予定の同年12月末日までの賃料を支払う意思を有していたものの,本件建物の撤去に500万円程度の費用を要すると見込まれたことから,原告(若しくは取得を希望する第三者)に本件建物の買取りを打診した。これに対して,原告は,Cの苦境に理解を示し,中途解約自体は応ずる意向を示しながらも,築後相当年月が経過している本件建物の買取りについては,むしろ更地の状態の方が利用価値が高いことから,これに応ずる意思のないことを表明したため,双方で新しい賃借人を探し,その賃借人に本件建物を買取ってもらうか,場合によっては無償で譲渡する方向で検討することになり,そのための猶予期間を設けることでBも了承した。
このような協議を基に,Cは,同年9月5日付けで本件申入文書を作成し,原告に送付したが,同文書には,要旨,@原告との協議の結果,Cが高針店における営業を平成12年9月末日で休止し,同年10月中旬には閉店することから,本件賃貸契約の中途解約をお願いすること,A中途解約の条件としては,原告との協議のとおり,平成13年2月分まではCが現行の賃料を支払い,その間に新賃借人があったときは本件建物を新賃借人に譲渡したいと思っていること,Bまた,平成13年1月末日までに新賃借人がないときの本件建物の処理については,原告の指示に従い,本件高針土地を明け渡すことなどの内容が記載されている。
d その後,Cは,出店の意向を有していたRに対して,本件建物の取得等を働きかけたが,交渉がまとまらないうちに,中古車買取販売業を営むDが名古屋市内で営業用店舗を探しているとの話がS株式会社を通じてAに伝えられ,平成12年10月ころ,現地確認等の結果,Dが本件建物をそのまま借用したいとの意向を示したため,取壊し費用の出捐を免れることとなるCも,その話を前提として,中途解約の交渉を進めることに同意した。
そして,最終的に,Cが原告に本件建物を無償譲渡し,原告がその所有権を取得した上で,Dに本件建物を賃貸することで協議がまとまったが,その際,Cが差し入れていた保証金1000万円については,全額が返還されることで双方の考えは一致しており,交渉で問題になることがなかった。
かくして,原告とCとの間で,同年11月14日,本件合意が成立した。
その際に作成された本件合意書には,次のとおりの記載がある。
「第1条 本契約を平成12年11月15日付にて解約することを甲(原告)・乙(C)は合意した。
第2条 乙が支払済の平成12月11月分の賃料金62万円也の内解約日以降の賃料金31万円也は,平成12年11月30日までに甲は乙に返還する。
第3条 甲は本契約第11条に基づき乙が甲に差し入れた保証金1000万円也を,平成12年11月30日までに乙に返還する。
第4条 乙は,本契約13条に基づき乙が建設した乙所有の物件(2)を現状有姿にて平成12年11月15日に甲に無償譲渡する。(以下略)
第5条 (略)
第6条 甲・乙は,この契約を履行することにより他の債権,債務の無いことを確認した。」
e 他方,原告とDとは,平成12年11月16日,事前の交渉に基づき,Dが本件建物を賃料月額82万円で賃借する旨の賃貸借契約を締結したが,
その契約期間は,本件賃貸契約の解約日の翌日である平成12年11月16日から満5年間とされた。
(イ) 以上の認定事実によれば,本件建物の(当初は有償,その後は無償)譲渡の話は,土地賃貸借契約である本件賃貸契約の終了に伴って,賃借人であるCが負担することとなる原状回復義務としての建物収去(土地明渡)義務の履行が相当額の費用出捐を伴うことから,その負担を免れたいCの希望に沿って申し入れられたものであり,もともと,原告側にとって,本来の収去義務の履行と比較して,より多くの利益をもたらすものではなかったこと,もっとも,たまたま新賃借人候補となったDが,本件建物をそのまま借り受けたいとの意向を示したことから,Cと原告の利害関係が一致し,本件賃貸契約の中途解約を内容とする本件合意の中で,本件建物の無償譲受けが約されたこと,以上の経緯が明らかである。
そうすると,本件建物の無償譲受けは,賃貸借契約に基づいて目的物を使用収益させる賃貸人の義務やこれに対する賃料等を支払う賃借人の義務とは関連せず,専ら同契約の終了に伴う原状回復義務の履行を賃借人が免れる(軽減する)ことを目的として行われたものであるから,何らかの意味で賃貸借の目的物を使用収益する対価(あるいはこれに代わるもの)たる性質を有するものでないといわざるを得ない。
この点について,被告は,前記のとおり,その主張内容に変遷があるものの,最終的には,本件建物の無償譲受けは本件申入文書が交付されたときから平成13年2月までの6か月分の賃料支払に代わるものとして約されたものであり,対象不動産を使用させることによって得られる対価に代わる性質を有している旨主張するところ,本件申入文書中には,Cが平成13年2月分まで現行の賃料を支払う旨の文言が記載されていることは前記認定のとおりであり(乙11には原告がその支払を要求した旨の内容が記載されている。もっとも,甲20にはこの事実を否定する内容が記載されている。),また,そもそも,本件賃貸契約中に解約権留保の約定(民法618条)が存在しない以上,賃借人たるCは,本来,当初の契約期間満了までの賃料支払義務を免れないとも考えられる。
しかしながら,合意解約は,既存の契約を終了させる旨の新たな契約であるから,当事者間で本来の法的効果と異なる内容を定めることは何ら妨げられるものではないところ,前記認定のとおり,原告は,Cの立場を理解して申入れに係る中途解約に応ずる意思のあることを表明しており,また,本件建物の買取りには応じないものの,Cの負担を軽減すべく,双方で新賃借人を探すことに同意していることに照らすと,原告としては,新賃借人が確保され,同人との間で新しい賃貸借契約が締結された場合には,その後の期間の賃料(ないし賃料相当損害金)の支払を求める意思がなかったと判断することができ,法的にも,その時点からは目的物である本件建物をCが使用収益できなくなる以上,原告がこれらの支払を求める権利を有するものでないことが明らかであるから,本件申入文書の上記文言は,新賃借人が見付からない場合でも,Cは平成13年2月分までの賃料を支払い,その時点で本件賃貸契約を解約するとの契約存続の最終期限を提示したものと解釈するのが相当である。
そうすると,原告が,平成12年11月16日,Dとの間で賃貸借契約を締結し,本件高針土地をCの使用収益に供することを廃止した以上,Cに対する同日以降の賃料等の債権は発生し得ないから,平成13年2月分までの賃料等債権に代わるものとして本件建物の無償譲渡が行われたとの被告の主張は,金銭評価において両者が釣り合っていないことをさておいても,採用の余地がない(付言すれば,本件建物を原告に譲渡することによって,Cには本件建物の収去義務は発生しなかったのであるから,その履行に代わるものとして本件建物の無償譲受けが行われたと解することもできない。)。
(ウ) 以上のとおり,本件建物の無償譲渡は,賃貸借契約の終了に伴ってなされたものであるが,賃貸人が賃借人に対して一定の期間,目的物を使用収益させる対価として受ける利益,若しくはこれに代わる性質を有するものではないから,不動産所得に当たらないというほかなく,被告の主位的主張は採用できない。
(2) 雑所得の該当性について
ア 被告の予備的主張の追加(理由の差替え)の許否について
所得税法155条2項は,税務署長は,居住者の提出した青色申告書に係る年分の総所得金額の更正をする場合には,その更正に係る国税通則法28条2項に規定する更正通知書にその更正の理由を附記しなければならない旨定めているところ,これは,課税庁による判断の慎重さ及び合理性を担保し,その恣意を抑制するとともに,処分の理由を相手方に知らせて,不服申立ての便宜を図ることにあると解される。したがって,更正処分の取消訴訟において,課税庁である被告が処分理由を差し替えることは原則として許されないが,上記差替えによっても,当該処分を争うについて被処分者である納税者に格別の不利益を与えるものではないなど,理由附記制度の趣旨を損なうおそれがないと認められる場合には,処分理由の差替えは許されないものではないと解される(最高裁判所昭和56年7月14日第三小法廷判決・民集35巻5号901頁参照)。
しかるところ,前記認定のとおり,被告は,本件所得税課税処分においては,本件建物利益が不動産所得に当たる旨の理由を附記し,異議決定においても同様の理由を述べていたのに対し,本訴の審理の中途段階に至って,雑所得に当たる旨の主張を予備的に追加したものであり,このように所得区分を異にするような処分理由を追加した結果,原告側に新たな反論をする必要を生じたことは否定できない。
しかしながら,主位的主張といい予備的主張といい,被告が所得に当たると主張する原告の経済的利益が本件建物の無償譲受けであることは共通しており,両者は事実関係自体の主張を異にするものではなく,単に所得区分に関する税法上の評価の差異にすぎないから,原告側に新たな事実調査を行うなどの負担をもたらしたとは考え難く,結局,原告に格別の不利益を与えるものとはいえないから,被告による予備的主張の追加が許されないとの原告の主張は採用できない。
イ 本件建物利益の雑所得該当性について
被告は,予備的に,本件建物利益が雑所得に該当すると主張するところ,雑所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得,譲渡所得及び一時所得のいずれにも該当しない所得をいうとされ(所得税法35条1項),消去法による定義がされているから,上記主張が認められるためには,本件建物利益が上記各所得のいずれにも該当しないことが肯定される必要がある。そして,本件建物利益が不動産所得に該当しないことは既述のとおりであり,かつ,その性格に照らせば,利子所得,配当所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得のいずれにも該当しないことが明らかである(同法23条,24条,27条,28条,30条,32条,33条)から,以下においては,原告の主張する一時所得の(非)該当性を判断する。
ところで,一時所得とは,利子所得,配当所得,不動産所得,事業所得,給与所得,退職所得,山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものをいうとされている(同法34条1項)ところ,その特色は,臨時的,偶発的に発生する利得であることにあり,一般には担税力が低いと考えられることから,いわゆる長期保有資産の譲渡所得の場合と同様に,50万円を限度とする特別控除後の2分の1相当額を総合課税の対象とする方法で超過累進税率の適用緩和が図られている(同法22条2項2号)。
しかるところ,本件建物利益は,上記認定・判断のとおり,Dが本件建物をそのまま借り受けることを申し入れたことによって,本来はCが履行すべき本件建物の収去が必要でなくなったため,原告に無償譲渡された結果,もたらされたものであって,不動産賃貸業務における継続的行為によって生じた所得に当たらず,しかも,労務その他の役務の対価とか資産の譲渡の対価としての性質も有しないから,一時所得に当たると解するのが相当である。
この点について,被告は,本件建物の無償譲受けは,一見すると一時的・偶発的であるが,実質的には本件賃貸契約の中途解約及び保証金の全額返還等を容認する見返りに得た所得であり,本件賃貸契約の終了に当たって権利関係を清算するために行われたものであるところ,不動産の賃貸契約の終了に当たって権利関係を清算することは偶発的なことではなく,むしろ,継続的,恒常的なことである旨主張する。
確かに,不動産賃貸契約の終了に当たって,目的物を原状回復したり,差し入れられていた保証金を返還するなど,法律の規定や約定に従った清算行為を行うことは,不動産賃貸業においては,繰り返し生じ得る事態であるが,本件建物の無償譲受けは,上記のような通常予定されている清算行為に属するものではなく,むしろ,賃借人の本来的な義務である原状回復義務の履行という負担を免れることを目的とし,かつ,たまたま履行されない状態での借受けを希望する新たな賃借人が出現したことから,行われることになったものであって,臨時的,偶発的に生じたと評価できることが明らかである。
そうすると,本件建物利益は一時所得に該当し,雑所得に区分されるべきものではないと判断するのが相当であるから,被告の予備的主張は採用できない。
2 争点(2)(本件駐車場収入の消費税等課税売上げ該当性)について
(1) 判断基準について
消費税法は,4条1項,2条1項8号において,国内において事業者が行った資産の譲渡等,すなわち,事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供には,消費税を課することを定めるとともに,6条1項及び同法別表第1の13号は,住宅,すなわち人の居住の用に供する家屋又は家屋のうち人の居住の用に供する部分の貸付け(当該貸付けに係る契約において人の居住の用に供することが明らかにされているものに限るものとし,一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)には,消費税を課税しない旨を定めている。また,6条及び同法別表第1の1号は,土地の譲渡及び貸付け(一時的に使用させる場合その他の政令で定める場合を除く。)についても,消費税の課税対象外である旨を定めるが,同法施行令8条は,土地の貸付けに係る期間が1月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合は課税対象外から除かれること,すなわち課税対象となることを定めている。
したがって,消費税法は,駐車場の利用に伴って土地が使用される場合は原則としてその収入が課税売上げに当たると定めている一方,住宅の貸付けについては課税されないと定めているため,駐車場付きの住宅の貸付けにおいて,両者の区別が容易である場合には,駐車場部分の貸付けによる収入が課税売上げに当たると解されるものの,その区別が必ずしも容易でない場合には,例外的にどのように処理すべきかが問題となる。
この点について,本件通達(消費税基本通達6−13−3)は,「駐車場付き住宅としてその全体が住宅の貸付けとされる駐車場には,一戸建住宅に係る駐車場のほか,集合住宅に係る駐車場で入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが割り当てられる等の場合で,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものが該当する。」と定め,さらに,「住宅の貸付け」の範囲を,「庭,塀その他これらに類するもので,通常,住宅に付随して貸し付けられると認められるもの及び家具,じゅうたん,照明設備,冷暖房設備その他これらに類するもので住宅の附属設備として,住宅と一体となって貸し付けられると認められるものは含まれる。なお,住宅の附属設備又は通常住宅に付随する施設等と認められるものであっても,当事者間において住宅とは別の賃貸借の目的物として,住宅の貸付けの対価とは別に使用料等を収受している場合には,当該設備又は施設の使用料等は非課税とならない。」(同通達6−13−1)と定めている。
これらによれば,本件通達は,駐車場の貸付けが住宅の附属施設として一体として行われる場合であって,住宅の貸付けの対価とは別に駐車場使用料等を収受していないものに限り,全体を住宅の貸付けとして扱い,駐車場部分についても非課税とする取扱いを定めているところ,このような基準は,駐車場の貸付けが原則として課税売上げに当たり,住宅の貸付けに含まれて両者の区別が不可能ないし著しく困難である場合に例外的に非課税とする消費税法の上記趣旨に合致すること,実際にも,住宅の使用料とは別個に駐車場使用料等が定められ,収受されている場合には,住宅の貸付けと駐車場の貸付けとの区別が容易であると考えられることなどを考慮すると,その合理性を十分に肯認することができる。
この点について,原告は,@集合住宅において,駐車場付きとそうでない場合とで賃料が異なるのは社会通念上当然であるから,契約書の異同とか賃料額の定め方といった形式だけで判断するのではなく,実質的に駐車場が住宅と一体化して貸付けられているかによるべきであること,A駐車場の数が住宅のそれより少ない場合でも,駐車場から見れば必ずどれかの住宅と一体となっていると考え得るから,入居者について1戸当たり1台分以上の駐車スペースが割り当てられているとの要件は必要でない旨主張する。
しかしながら,@については,住宅と駐車場との実質的一体性がどのようなものであるかは必ずしもつまびらかでなく,その有無の判断は必ずしも容易ではないことをさておいても,少なくとも,住宅の使用料とは別個に駐車場使用料が定められ,収受されている場合は,実質的にも駐車場の貸付けが住宅のそれと一体化していないことを示す重要な徴表であると考えられ,また,Aについては,駐車場が住宅の数より少なくとも,例えば,ある特定の住宅を借り受ければ常に駐車場も借受けの対象となるのであれば,当該特定の住宅の貸付けについてはその駐車場の貸付けと一体化されていると認め得るが,そうでない限りは,住宅を借りる場合に駐車場も伴うかどうかは,その時の需給事情や当事者の意思等の状況にかかることになるから,住宅の貸付けと一体化していると評価することはできないというべきであり,したがって,原告の上記主張は採用できない。
(2) 本件各駐車場の収入について
ア Fの駐車場
前記前提事実(3)及び証拠(甲22の1ないし8,23,乙6,18,証人B)を総合すれば,Fは,3街区(棟)の建物からなる集合住宅であり,1街区の居室が4戸,2街区及び3街区の居室が各3戸あって,合計10戸(各戸とも2階建て)から構成されていること,敷地内のうち北側道路に面した部分に11台分の駐車場が並べて設置されていること,そのうち,居室数を上回る1台分の駐車場については,番号1−1の居室を借り受けたTに対して貸し付けられているが,その契約書は,駐車場1台分込みの建物賃貸借契約書(家賃は1台分の駐車場利用料を含み月額12万6000円)とは別に作成され,これに基づく駐車場料金5000円がFの入金管理表に記帳されていること,それ以外の居室の賃貸借契約書には,居室及び駐車場1台分を合算した賃料の合意が記載されていること,以上の事実が認められる。
そうすると,番号1−1の居室の賃借人が借りており,別に駐車場契約が締結されている駐車場の利用については,住宅の貸付けと一体化して貸し付けられている場合には当たらないから,この部分の収入については課税売上げに該当すると判断するのが相当である。
イ Eの駐車場
前記前提事実(3)及び証拠(甲21の1ないし5,23,乙20,証人B)を総合すると,Eは,全体が2階建てで各階に3戸,合計6戸の集合住宅であること,駐車場は6台分あり,各居室の北側に並んで設置されていること,通常,Eの各賃借人は,全員が1台分の駐車場を借り受けて利用しているが,駐車場が不要の人には駐車場を貸さないで貸室料のみでよいという入居者募集広告がされており,現に,平成12年9月ないし同年11月ころは,駐車場を利用せず,駐車場使用料を支払っていない賃借人が1人いたこと,2階建ての建物の外部への出入口は2か所あり,そのうち101号室及び201号室の入居者は東側の出入口を,102号室,202号室,103号室及び203号室の入居者は西側の出入口を共同で利用する構造になっており,しかも,駐車場と道路との間に門扉等の設備がないことからすれば,各入居者が必ずその前の駐車場を利用しなければならない構造になっているわけではなく,仮に,駐車場を利用しない賃借人がいた場合には,他の賃借人に2台分の駐車場を貸すなどの対応が可能であること,原告と各賃借人との間の賃貸借契約書では,居室料とは別に駐車場使用料が定められていること,以上の事実が認められる。
上記認定によれば,Eの駐車場は,住宅の貸付けに必然的に付随するものではなく,その使用料も別に定められているから,駐車場の貸付けが住宅の貸付けと一体化していると認めることは困難であり,その収入は課税売上げに該当すると判断するのが相当である。
ウG及びHの駐車場
前記前提事実(3)によれば,Gは,居室が8戸あるのに対し,駐車場は5台分,Hは,居室が10戸あるのに対し,駐車場は2台分しかないことが認められる。
そうすると,これらについては,入居者各戸に駐車場が割り当てられるわけではなく,その時々の駐車場の空き具合とか借受け希望者の数などの事情によって駐車場の使用状況が左右される上,駐車場を賃借している者の賃貸借契約においては,それぞれ家賃とは別に駐車料が定められており,駐車場は住宅とは別の賃貸借契約の目的物とされていると推認されることに照らせば,その駐車場の貸付けが住宅の貸付けと一体化されていると認めることはできない(Hにおいて,このような一体性が認めにくいことは,原告の自認するところである。)から,その収入は課税売上げに該当することが明らかである。
3 争点(3)(本件教会賃料の消費税等課税売上げ該当性)について
(1) 本件教会の所有権の所在について
ア 被告の主張の検討
被告は,本件各課税年度において,本件教会(ただし,増築前の部分。以下,断りのない限り,同様)の所有権が原告に属すると主張するところ,@原告とI教会(J)との間で「建物賃貸借契約書」が作成されており,その内容も,原告が所有者であることを前提としていることが明らかであること(甲8),A本件教会の増築時に作成された「建物建築合意書」においても,I教会は,10年間の使用期間経過後,増築建物を撤去して原状に復する旨記載されており,原告が所有者であることを前提としていること(乙5),B原告は,昭和63年から15年間にわたり,本件教会賃料を課税売上げとして申告してきたものであり,反面,所得税の申告に当たり,本件教会の取得費800万円を減価償却費として計上してきたこと(乙8の1ないし5,証人P),C本件教会の登記簿には,昭和63年の建築当初から,原告を所有者とする保存登記等がなされていること(甲7),D原告の主張のとおりであるなら,原告が工面した建築費用800万円をI教会に貸し付けたことを証する消費貸借契約書や,その完済まで本件教会の所有名義人を原告とする旨の譲渡担保設定契約書が存在して然るべきところ,これらは存在しないことなどの事情を総合すれば,本件教会の所有権は原告に属していたと認められる。
イ 原告の主張の検討
これに対し,原告は,金融機関から借り受けた800万円をI教会に貸し付け,I教会がこれを資金として建築請負契約を締結し,本件教会を建築したものであるから,その所有権はI教会に属するものであるが,上記貸金の完済まで,原告の所有名義とする譲渡担保設定契約が締結されたと主張し,その根拠として,@Jを発注者とし,株式会社Uを請負者とする本件教会新築「工事請負契約書」(甲6)が存在すること,A当初,I教会に貸し付けた800万円の分割返済額と本件松井町土地の地代相当額を加えた25万円をもって月額賃料としており,その後,分割返済期間が終了した平成9年12月15日にさかのぼって,賃料が地代相当額に減額されていること(甲9,11),BI教会が本件教会を増築した際に名義人である原告に課せられた不動産取得税は,I教会が負担していること(甲10)などを挙げる。
そこで,まず@について検討するに,なるほど,甲6はJを発注者とする「工事請負契約書」であるが,その「4 請負代金の額」欄には,「950万円の内 ¥1.500.000」と記載され,請負代金総額と比較して僅少な内金についてのみ表示されているところ,この金額が前払金,頭金,初回支払金などではなく,Jの支払う全額であることは,「5 請負代金の支払」欄の記載内容に照らして明らかである。
また,「3 引渡の時期」欄に何らの記載もないことからすると,請負者からJへの引渡しは予定されていなかったとも考えられる。
そうすると,請負代金の大部分である800万円についても,同様の工事請負契約書が作成され,かつ,その発注者の表示が原告であったと推認することができる。
したがって,甲6をもって,Jが本件教会新築工事の発注者であり,完成後にその所有権を取得したと認めることはできない。
次に,Aについて検討するに,証人Bの証言によれば,甲9は,原告がJに貸し付けた800万円のうち,自己資金100万円を除いた金融機関からの融資金700万円を,年利6.12パーセントで120回(10年間)の均等分割弁済するときの月額返済金額(7万8136円)を計算し,これに本件松井町土地の地代相当額等を加えて,月額25万円の賃料額を算出した際のメモである旨証言するところ,仮に原告がJに800万円を貸し付けたのであれば,その返済元本を800万円として計算しなければならないはずであり(この点について,証人Bは,今となっては計算方法ははっきり分からない旨証言する。),これを700万円として計算したことは,Bとしては,原告がJに対して800万円を貸し付けたとの認識を全く有していなかったことを裏付けるというべきである。
そして,書面中に,「建物賃貸借契約」の文言が複数回にわたって記載されていること(この点は,甲11,14でも同様である。),借入金700万円を前提とした月額返済金額が,本件建物関係の諸費用として原告が負担することが予想される固定資産税,火災保険料,不動産取得税,登録免許税等と並べて記載されていることなどに照らすと,月額返済金額が賃料に含められているのは,原告が融資を受けた金融機関に負担する分割返済金をJから収受する賃料に転嫁するためであったにすぎないと解するのが相当であり,結局,甲9は,被告の主張を裏付けるものではあっても,原告の主張を支持するものとは到底いえない。
さらに,甲11によれば,建築費・諸経費の償却(10年返済 月額8万2877円)が10年間で終わったことから,家賃をそれまでの地代相当額16万7123円に上乗せをして20万円に改定する旨の提案をAがJに示したことが認められ,この事実からは,その後の「家賃」が「地代相当額」を基礎として定められたこと自体は首肯できるものの,他方で,本件建物の建築費等の償却部分がなくなった代わりに,それまでの地代相当額をそのまま賃料とするのではなく,ある程度の金額を上乗して改定されたことも明らかであるから,甲11も原告の主張を裏付けるものとはいえない。
最後にBについて検討するに,甲10は,原告に対して納付通知のあった本件教会についての不動産取得税について,Jへ求償を求める書面であると認められるが,甲7,12及び13によれば,Jは,平成7年2月ころ,信者から工面した約2400万円の資金をもって本件教会の増築工事を行い,これによる価値の増加を5分の4と評価して(当初の本件教会の建築費が950万円であったのは上記のとおりであるが,年月の経過による減価を考慮して,この割合を決定したものと推測される。),同年5月30日受付をもって所有権一部移転登記がなされていることが認められるから,上記の不動産取得税は,増築分に関するものであったと推認することができる。
そうすると,本件教会の当初からの部分,換言すれば増築後の本件教会の持分5分の1についても,Jの所有であったことを認めるものではないというべきである。
ウ 小括
以上のとおり,原告の指摘する事情,証拠を検討としても,本件教会が原告の所有(増築後は共有者)であり,原告との間の賃貸借契約が本件教会を目的物とするものであったとの前記認定を覆すことはできない。
4 本件消費税等課税処分の適法性について
2,3の判断を基に,原告の消費税等の課税売上高を計算すると,別表2記載のとおりとなり,これを前提として関係法令を適用して消費税等の税額を算出すると,別表3記載のとおりとなるところ,この金額は,平成11年及び平成12年課税期間については原処分の納付すべき消費税額等を上回っており,平成13年課税期間についてはそれと同額となるから,本件消費税等課税処分は適法というべきである。
5 結論
よって,原告の本訴請求のうち,本件所得税更正処分(ただし,平成15年3月25日付け異議決定によって一部取消後のもの)のうち申告額を超える部分及びこれについての過少申告加算税賦課決定処分の取消しを求める部分は理由があるからいずれも認容することとし,その余の請求はいずれも理由がないから棄却し,訴訟費用の負担につき,行訴法7条,民訴法61条,64条を適用して,主文のとおり判決する。

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